Q.「聞いたことをすぐに忘れちゃうんだ。わざとじゃないのに、いつも怒られるんだ。どうしたらいいの?」

ご本人 「聞いたことをすぐに忘れちゃうんだ。わざとじゃないのに、いつも怒られるんだ。どうしたらいいの?」

鈴田 「自分のこと、すぐ忘れちゃうって癖があることを、ちゃんと理解できてるのはすごいね。」

ご本人 「いつもみんなに怒られるからね。それで困ってるんだよ」

鈴田 「自分のことを、しっかりと分かって、それを周りの人にも分かってもらうことは、とても大切なことなんだよ。忘れっぽいことを隠してびくびくしているよりも、「ぼく、忘れっぽいから、忘れてたら教えてね」って周りに助けを求めることができれば、あなたもまわりも過ごしやすくなるんだよ。だから、今、「自分は忘れっぽい」って言えることは、素晴らしいんだよ」

ご本人 「でも、怒られるんだよ。ばかにする子もいるし」

鈴田 「じゃあ、忘れないための方法をいくつかやってみようか」

ご本人 「うん」

鈴田 「今から3つのことを言うよ。覚えておいてね」

ご本人 「うん」

鈴田 「今、覚えようと思った?」

ご本人 「うん、がんばって覚えようと思った」

鈴田 「すごいね。その気持ちが大切だね。覚える必要がある時は、最初にこうやって「覚えてね」って言ってもらえると違ってくるんだ。周りのみんなに、覚えなきゃいけない時には、先に言ってねって頼んでごらん」

ご本人 「うまく言えないかも」

鈴田 「家の人には伝えておくから大丈夫。それと、何個覚えるかは覚えてる?」

ご本人 「3だったかな」

鈴田 「正解。ちゃんと覚えてるね。3つのことを覚える時には、指を3本立てるのがコツなんだよ。」

ご本人 「こう?」

鈴田 「そう、そして、1本の指に1つ覚えることを言っていくんだ。じゃあ、買い物でお願いするものを3つ言うから覚えてね。燃えないゴミの袋、きゅうり、漢字ノート。さあ、指を1本ずつ触りながら言ってみよう」

ご本人 「でもそのくらいなら、忘れないよ」

鈴田 「かもね、でも買い物に行くには、時間がかかるでしょ。その間に友達に会ってしゃべったら、忘れちゃうかも。」

ご本人 「そっか。じゃあやってみる。燃えないゴミの袋、きゅうり、漢字ノート」

鈴田 「一回口に出して言ってみたね。実はそれが大事なんだ。覚えたい時には、一度口に出してみると覚えやすくなることが多いんだ。それと、覚えることが3つあるって、指を立てて触ったことも大切なんだよ。それで、後で思い出すことができることがあるんだ。」

ご本人 「なんで?」

鈴田 「買い物に行って、レジに並ぶ前に、これでよかったかなあってなるよね。そしたら、指を何本立てたか、触ったか思い出してごらん。3本って覚えてるだけで、足りないものがあることに気がつけるんだ。今、2個かごにいれてたら、あと1個必要って思い出せるね。あと1個なんだっけと考えることが、足りないものを思い出すチャンスになるんだ」

ご本人 「買い物はわかったけど、勉強はどうしたいいの?すぐ忘れちゃうんだ」

鈴田 「勉強は、それぞれにコツがあるから、もう少し難しくなるよ。だけど、この方法をやって、覚えようとする気持ちを持つことと、思い出す練習をやってごらん。きっと勉強にも役立つことがあるはず。」

ご本人 「うーん。とりあえずやってみるけど、忘れちゃうかも」

鈴田 「忘れるかもって、自分のことをちゃんと分かってるから、そこに気がつけるだけ素晴らしいんだよ。まずは、自分の癖を知って、周りの人に分かってもらうことからスタートだね」

ご本人 「わかった。忘れてたら教えてねって言ってみるよ」

ヒント:忘れっぽい君へ

 

人にはそれぞれ得意な覚え方があるよ。歌で覚えたり、絵に描いて覚えたり、動きながら覚える子もいるよ。自分がどのタイプなのか考えてみるといいかも。聞いたことを覚えたり、忘れ物を減らしたりすることは難しいけど、いろいろな工夫があるから、あせらないこと。大人になると、録音したり、写真に撮ったりする人もいるよ。あと大切な物と一緒にしておくと忘れにくいかも知れないね。いつも忘れ物をするAくんは、スマホだけは忘れないから、そこに家の鍵をつけるようにしたら、家の鍵をなくさなくなったよ。

保護者の方、担任の先生へ

 

マジカルナンバー7という言葉を聞いたことがあるかも知れません。これは、人が覚えることができる容量が7±2(5~9)チャンクであるという実験からきています。それでは「0929838666」という数字を覚えてみましょう。難しいですね。でも、092ー983ー8666という風に、まとまりを作るとどうでしょうか。このまとまりをチャンクと考えてみてください。少し覚えやすくなった気がしませんか。同じ10桁の数字でも、工夫をすると、10チャンクで覚えるのではなく、3チャンクで覚えることができます。この3チャンクも、馴染みのある市外局番は覚えやすいし、8666をハローと置き換える(語呂合わせ)こともできます。お子さんが覚えにくい特性を持っている場合も、あせらず、工夫しながら進んでください。